これからもお元気で

当治療院の最高齢の患者様は今年89歳の女性。

私には尊敬する憧れの女性が数人いるが、その一人が彼女である。

彼女とは、師匠の所で見習いをしている時からの付き合い。まだ学生だった。
私が開業してからも、月に数度は通って頂いた。

昨年までの彼女は、週に3日、忙しく仕事をしていた。しかも電車通勤。
とても疲れていらっしゃる時は、滑舌が悪くなったり、足首までパンパンに浮腫(むく)んでいることもあった。でも、施術後にはスッキリし、「やっぱり鍼は良いわぁ、頭がクリアになる」と言って、颯爽と帰られた。

昨年の夏には、足首の動きが自由にならない程に浮腫んでしまい、鍼・灸とあわせて、バンテージで浮腫(むくみ)をとった事も思い出される。

治療が終わると、話しが尽きる事なく色々な話しをした。頭の回転が速く、テンポよくお話しされる。その際、叱咤激励を常に頂いた。叱咤の方が多かった気がするが、とても愛があり、彼女と話しをすると元気をもらえた。そのおかげもあって、ここまで続けてこられたと思う。

ある時、「師匠の鍼に似てきたね」と言って頂き、「どんなに辛くても、自分を信じて、まずは10年頑張りなさい」と励まされた。帰りの際にはいつも、「お互い頑張りましょう」とテンション高く治療院を出ていかれた。

その彼女も、秋の終わりに肺炎にかかり、仕事を辞められた。回復したら、また当院に通いたいと電話を頂いていたので、お会い出来るのを楽しみにしていた。そして、先週末に電話を頂いた。

「電車に乗らなければいけないし、人混みで何かあったら大変だと、家族がとても心配しているので、もう通えない」

声にはすっかり元気がなく、ずっとお付き合いしたかったと言って頂き、何度も何度もありがとうと。何も出来ない自分が歯がゆく、お互い、中々電話をきることが出来なかった。

私にも、高齢で病弱の母親がおり、家族の気持ちはよく分かる。かなり遠くから通われていたので、ご家族の心配は当然かと思う。

わざわざお電話頂いたことが、大変ありがたかった。

私は、彼女に沢山の事を教わった。カッコイイ女性で、一生働きたいと常々仰っていた。

今は、彼女が楽しい日々を過ごして、彼女の行きたがっていた家族旅行にいければ良いなと思う。

これからも彼女に叱咤されないよう精進していこう。

(2017年1月14日更新)

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